朗読舞台「逢いたくて・・・」:言葉の持つ力。末永く演じられ、語られ続けてほしい作品。

10/8(土) 三越劇場日本橋三越本店)にて、朗読舞台「逢いたくて・・・」を鑑賞しました。

 

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ただ一人に伝えることだけを願って綴った言葉がもつ、強い力をひしひしと感じました。この、第二次世界大戦中に実際に綴られた手紙をベースにした作品がぜひ今後も末永く演じられ、この舞台を通じて、少しでも多くの人にとって、なんでもよいので、なにかを感じるきっかけとなりますように、と願いました。

 

この舞台は、第二次世界大戦中、実際にある中尉の元に日本の奥様から届けられた手紙をもとに書かれた『戦地で生きる支えとなった115通の恋文』(著:稲垣麻由美)が原作です。脚本家の樫田正剛氏により、俳優3人が演じる朗読舞台になっています。

 

こちら、私は観に行けていない5月公演時のものですが、稲垣さんのブログをお読みいただくのがわかりやすいので、紹介させていただきます。

ameblo.jp

 

私が観に行った日は、徳永えりさん、前川泰之さん、町田啓太さん(五十音順)ご出演。13時の部、17時の部と、2回鑑賞させていただきました。

 

みなさん、本を声に出して読む機会ってありますか?

小学校の頃は国語の時間に、教科書を声に出して読んだものです。

お子さんがいらっしゃる方ですと、絵本の読み聞かせをされますでしょうか。

 

私は時々、家で本を声に出して読みます。

なんのためにと(笑)? ある先生から、「言葉というのは、声に出すことで自分のものになる。本を声に出して読んだり、自分の書いたものを音読してみたりするといい」というアドバイスをいただいたからです。毎日続けるように、と言われましたが・・・時々しかできておりません。

 

音読、難しいです。日頃仕事でプレゼンの機会が多い人なら違うかもしれませんが、私なぞ、日々パソコンに向かっている身。文庫本1ページ程度で喉が疲れてきますし、集中力も切れてきます。つっかえるのはもちろん、変なイントネーションになってしまったり。

 

賑やかしのない舞台で見せる、説得力、集中力 、美しさ

舞台に設置されているのは、椅子3脚と、机と椅子1セット。

出演者が台本を手に、白×黒のシンプルな衣装、必要最低限の音響に舞台装置で、セリフと地の文を朗読します。

観客に迎合する部分をしいて挙げるならば、出演陣が大変見目麗しいことでしょうか(笑) 

 

※この三人と言えば・・・サービス精神旺盛なキャスティングでもあるのですが、私からの説明は省略させていただきます。樫田氏のブログでどうぞ。

hounan.eplus2.jp

 

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 華美な舞台装置や音楽、目を引く動きでカタルシスを煽られることはありません。

三人の座る姿は凛として美しく、かと思えば、ところどころで見せるコミカルさは、いかなる状況でも人間臭く生きる姿の尊さ、愛おしさを感じさせます。

 

声や姿が美しいだけでなく、集中しながらも、人の心に言葉を届ける説得力が必要とされる演目だと思いました。約100分の公演中、聞き取りづらいところ、わかりづらいところなど、一か所もありませんでしたよ。これはもちろん、役者さんの力量はもちろん、脚本・演出が練られているのにもよるところが大きいのだろうと思います。

 

三人の俳優陣~徳永さんのやわらかさ、前川さんの絶妙なチャーミング成分、町田さんの七変化

三者三様の魅力に目を奪われました。

 

徳永えりさん:あの素敵な手紙の書き手、しづゑさん役。可愛らしく、時にドキっとさせる数々の言葉を綴った女性がこんな人だったらよいなぁ、と男性陣が思い浮かべるのも、さもありなんと思わせる、やわらかな美しさ。白いお肌も声も、やわらかいという言葉がふさわしい。

 

前川泰之さん:補充兵・石橋の、人間の男らしい欲求・恐怖をさらけ出すカッコ悪さを、カッコよくチャーミングに演じられていました。前川さんの出演作をこれまでテレビでもいくつか拝見していますが、このチャーミングさとダメ男ぶりの配合が、絶妙なんですよね。

 

町田啓太さん:“まだ恋も知らない”二十代の補充兵・澤田役をメインに、ナレーション、山田部隊長、他の日本兵の役、アメリカ兵の役などを声で演じ分けておられました。テレビドラマ「美女と男子」(2015年NHK)でも新人俳優がさまざまな役を演じる、という設定で七変化ぶりを見せていましたし、「カメレオン俳優」としての魅力を、今後も発揮していただきたいです。

石橋に振り回されることの多い澤田パートでのコミカルなセリフ回し・表情に気をとられていたところ、ラストが近づいてきたシーンでの、人と思われぬ美しい姿にゾクゾクきました。油断禁物です(笑)

 

今後も、ぜひ再演を・・・・

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第二次世界大戦中の手紙、兵士、というキーワードをきくと、つらく痛ましい描写の続く舞台を想像される方もいらっしゃるかもしれません。でも私は、この朗読舞台「逢いたくて・・・」を鑑賞させていただき、誰か特定の一人に向けた言葉がもつ大きな力をひしひしと感じましたし、人が人らしい望みを持ってカッコ悪くとも生きたいと願う、その姿を愛おしく拝見しました。

 

もちろん、戦時中の兵士たちのつらい毎日、国策により、個々人の意志や幸せを望む気持ちが報われない方向に進んでしまった時代の悲劇が描かれた物語でもあり、そこから受け取れるメッセージもたくさんあります。

※繰り返しになりますが、観た人がどのようなメッセージを受け取るかは、その人次第、でよいと思います。

 

今年の5月そして今回の10月だけにとどまらず、今後も日本各地で再演されるなどして、より多くの方へ、制作者さんや出演者さんの思いを届ける機会が増えますようにと思います。

 

最後に・・・こちらこそありがとうございました

演目が終了後、ご出演の3人が舞台に再登場し、「本日はご来場ありがとうございました」等のご挨拶をしてくださいました。

 

13時の部、前川さんからは「すごく緊張した」と。

17時の部の町田さん「美女と男子で共演したふたりとまた共演できてうれしかった。このような機会はなかなかあるものではない」と。

 

ほかにもいろいろお話されていましたが、「観て、聴いてくださりありがとうございました」という空気でいっぱいでした。こちらのほうこそ、そんなふうに思ってもらえる場にいさせていただいたこと、そのあたたかい目線の先に置いていただきましたこと、ありがとうございましたでございまする。あ、もう日本語変です。

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