あのプリンセスが踊り、駆け抜けた一夜のおとぎ話:映画「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」
私の初めての海外旅行はイギリスでした。
短い期間とは言え、日本語が通じない環境に身を置くなど生まれて初めて。
別に歴史的建造物でもなんでもない建物まで荘厳な街並みにぽ~っとしつつも、やたらと印象的だったものがあったのを覚えています。
それは、エリザベス女王やチャールズ皇太子、今は亡き(当時はプリンセスであった)ダイアナ妃など、皇室の方々の顔写真のポストカードがお土産物屋で売られていたことでした。しかも、ダイカット(お面のように顔の形になっている)なんですよ。
日本の皇室に置き換えたら・・・ちょっと想像しづらいですよね。
英国王室、体張ってるな、と当時20代だった私は思いました。
英国のテレビドラマや映画などには、しばしばご存命の皇室の方々が登場します。
この度鑑賞した映画「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」もそのひとつとなります。
1945年5月8日、第二次世界大戦において連合軍がドイツを降伏させた日、ロンドンで繰り広げられた市民のお祭り騒ぎに、当時まだ王女であったエリザベス(現在の英国女王エリザベス二世)とその妹のマーガレット王女がお忍びで参加した、という史実をモチーフにした物語です。
※この写真の後、少~しネタバレを始めます。
姉妹の一夜の冒険のはじまり
護衛をつけられて外出した姉妹。父母が用意した“外の世界”に連れてこられるも、護衛が目を離したすきに妹が退屈なそこを見知らぬ男性と抜け出します。
姉のエリザベスはそれを追いかけるけれど、二人を乗せた別のルートマスター(赤いロンドンバス)は別の方向へ。バスで隣の座席に座っていた空軍の青年・ジャックが、身分を隠したままのエリザベスの道中を助けます。
時の王でありエリザベスの父でもあるジョージ六世のスピーチがラジオから流れたとき、「陛下万歳!」とありがたがるほかの市民と違い、ジャックは悪態をつき、店から追い出されます。
おなじみの「プリンセス物語」にさしこむ影と輝き
戦友の死を目の前で見た悲しみ、手柄は偉い人がもっていく理不尽、王室は一体戦争において役に立ったのか・・・ジャックの言うことに共感しつつ、それでもエリザベスの一生懸命さ、父母を思う気持ちにも寄り添いながら観ました。
町で戦勝を喜び大騒ぎする群衆も、ひとりひとりに目を向ければ喜んでいるだけではなく、大事な人との別れの悲しみ、とにかく終わってくれたことに安堵する気持ちなどが描かれています。ジョージ六世も、この先の世の中に対して決して楽観的ではないのです。
エリザベス・マーガレット姉妹がお忍びで・・・という史実は、あの「ローマの休日」のモチーフとなったとも言われています。また、王女様がお忍びで町に、というストーリーはディズニー映画「アラジン」などでもおなじみです。
なにより、日本人が思い浮かべるのはアレですかね。
パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ・・・
ジャジャジャー、ジャージャージャージャー
あちらは将軍様ですが。
言ってみれば既視感のある物語なのですが、見る物すべてが珍しいエリザベス王女の目線で・・・というだけでなくけっこう危険なロンドンにハラハラドキドキしつつ、ジャックの身も気になり、あぶなっかしいマーガレットもドキドキさせてくれます。姉妹が今回の外出で関わる市井の人々も、いわゆる「きれいな」立場の人ばかりではありませんが、それぞれに一生懸命生きる様が心に残りました。
映画の中で使われるグレン・ミラーのダンスナンバーも、懐かしくも新鮮に聴こえ、よかったです。
現実のエリザベス女王は「国民に親しまれる王室」を目指していると言われています。
出展:
英エリザベス女王が在位記録更新 63年余、ビクトリア女王抜く 「国民に親しまれる王室」築く - 産経ニュース
戦勝の日にお忍びで・・・というのは史実ながら、この映画自体はもちろん?フィクションです。このような史実・フィクション入り混じる愛らしい映画を私たちが観られる、ということも、エリザベス女王のサービス精神の表われかもしれませんね。
とても愛らしい「一夜のおとぎ話」でした。
最後に蛇足
映画というエンターテイメントについて語るブログで言及するのは不適切と感じられるかもしれませんが。
現在私が暮らす国では、このようなテーマの映画を観て感想を述べることを許されるぐらいの平和を享受できております。平和なのは当たり前ではない、そのありがたさを、何かにつけ噛みしめて日々暮らしていきたいと思います。